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ワーグナー《ローエングリン》

Richard Wagner: Lohengrin(3幕のオペラ;ドイツ語)

  • 初演:1850/8/28 ワイマール宮廷劇場

概要

ローエングリン - Wikipedia

ローエングリン―ワーグナー

ローエングリン―ワーグナー

曲目解説

プログラム解説 - ワーグナー・グランド・ガラコンサート2019(三浦真弓)

  • 「エルザの夢」
  • 三幕への前奏曲 〜 婚礼の合唱(結婚行進曲)
  • 「はるか遠い国に(グラール語り)」

4:《ローエングリン》

 中世の叙事詩や聖杯伝説の「白鳥の騎士」をモデルにした、三幕の「ロマン的オペラ」。神秘的な存在である主人公ローエングリンは、後世の人々の夢想をかきたてるファンタジーの源泉となり、一方、純粋なだけにあまりに人間的なエルザの悲劇には、心理劇としての興味も尽きない。

 一幕、弟殺しの罪を着せられた公女エルザは、身の潔白を明かすため、彼女に代わって戦う騎士を指名するよう迫られる。居並ぶ騎士たちをよそに、エルザは、かつて祈りながら眠りに落ちた夢の中で天から降り立った、気高い騎士について語り始める(一幕二場「エルザの夢」)。ハープのアルペジオを合図に、ヴァイオリンが繊細で崇高な旋律を紡ぐ「聖杯の動機」が流れ、エルザは夢で見ただけの騎士の姿を熱をこめて語り、「その騎士の到来を私は待ちたいのです、その方が私の戦士となってくださるでしょう!」とくり返し訴える。エルザは、まだ見ぬその騎士に、我が身を妻として捧げることを誓う。

 やがて、エルザが夢に見た通りの騎士が現われ、無敵の力で彼女の無実を証明する。彼は、「自分がどこから来たか、なんという名前でどんな素性か」を決して尋ねないことを条件に、エルザと結ばれる。しかし、エルザを陥れようとたくらむ魔女オルトルートは、結婚式の前に、エルザの心にわざと不安をかき立て、素性の知れない騎士への疑念を植えつける(二幕)。

 「三幕への前奏曲」は、エルザと騎士の結婚の祝宴音楽である。華やかな金管楽器が大げさなほどの喜びを炸裂させ、せきたてるような弦の動きは、不幸つづきだった公国でお祝い事に飢えていた人々の心を表しているかのようだ。次に、トランペットに先導されて、「婚礼の合唱」が始まる。あまりに有名な「ワーグナーの結婚行進曲」であるが、この後につづく悲劇的な展開を念頭に聴くと、その整ったおごそかさが、壊れ物を扱うようなよそよそしさと感じられなくもない。人々は歌いながら、新郎新婦を初夜の寝室に送って遠ざかっていく。

 二人きりになると、エルザは幸せすぎるがゆえの恐れから、愛と信頼の証に、夫の本性を知りたいという思いに駆られる。魔女オルトルートの仕込んだ心理作戦が効き目を表し、エルザはついに禁じられた問いを発してしまう。騎士は、絶望的に、二人の幸せが終わったことを告げ、エルザが破った問いへの答えを語り始める(三幕二場「はるか遠い国に」)。かつて「エルザの夢」に現れた「聖杯の動機」の和音を背景に、神秘的な真実を明かしていくこの歌は、「グラール語り」とも呼ばれる通り、騎士が属する聖なる国の象徴である「Glar(グラール;聖杯)」の語がひときわ輝かしく響く。そして最後に、彼は「聖杯の騎士ローエングリン」と名前を明かして去っていく。

プログラム解説 - ワーグナー・グランド・ガラコンサート2019